いんてりっぽくなりたいブログ

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Brexit の闇②

 

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4月上旬のイギリス議会前②


テストがどんどん近づいています。だいこん(仮)です。

イギリス政治のテストなんですが、Brexit がでたら完璧な回答をできる学生はいるのでしょうか。。政治家でもあやしいのに、、

 

そんななか、僕はBrexit の闇について書き続けます。

 

 

ブレア政権

ときは1997年、トニー・ブレアが率いる労働党が総選挙で圧勝します。

このブレア首相が何を思ったのか憲法をどんどん改革していきます。

 

多くの改革の中でもっともBrexit に影響を与えているのが、

'Devolution' と呼ばれる、スコットランド等への権限の移譲です。

 

前に書きましたが、イギリスはイングランドウェールズスコットランド北アイルランドから成ります。

このうちイングランドを除く、それぞれの地域に権限を委譲したのです。

 

スコットランドの場合

スコットランドは1707年にイングランドと統合します。(建前)

実際には、前回お話しした議会主権が残っていることからわかるとおり、

イングランドスコットランドに対しても権限を持つようになります。

 

それまではどうにかなっていたようですが、

20世紀後半にスコットランド独立の流れが生まれてきます。

そんななか、ブレア政権はスコットランド立法権とその執行をする権限を委譲することにしました。

ただ、法律を制定することができるといっても、

国全体でまとめたほうがいいような分野(外交・防衛とか)については、

引き続きウエストミンスター議会が担当します。

 

ちなみに、70年代にも労働党政権化で権限委譲を試みましたが、

国民投票の結果、なしになりました。

 

最終的に1997年の国民投票では、権限移譲に賛成する者が多数を占め、

1998年にスコットランド議会ができます。

 

Brexitスコットランドに与える影響

Devolution はさまざまな議論を生むことになりました。

というのも、イギリスらしいことにブレア首相も権限を委譲するとどうなるをちゃんと把握していなかったようです。*1

 

その辺は省略しまして、

Brexit で問題になってくるのが、

EUから戻ってくる権限はイギリスに帰ってくるの?それともスコットランドとかに権限がいくの?」

という権限の争いです。

 

現在EUが環境・農業政策などを統一して行っているようですが、

EU離脱後にはイギリスを縛るものは何もなくなります。

 

このような現在EUが管理している分野における政策を

英国議会(ロンドン)が引き継ぐのか、それとも各地方で担当するのか。

このようなややこしいことが発生します。

 

たしかにEUでまとめてやってきたような政策(特に環境分野とか)は、

イギリス全土で統一して実施するほうが効率的な気がします。

(そうじゃなければEUでまとめてやってない)

 

一方で、権限移譲のときに英国議会が権限をもつと明示していない権限はそれぞれの地域が担当することになります。

したがって、英国議会がなにもしなければ、

スコットランド等がそれぞれ独自に政策を展開することができるようになります。

 

また、スコットランド議会の設立のために制定した法律の中で、

英国議会は、スコットランド議会の同意なしに、

スコットランドに影響を与えるような法律を制定しないとしています。

 

ざっくりいうと、EU を離脱して帰ってくると思っていた権限が、

実はイギリス議会に帰ってこないのでは?ということになったのです。

 

そして、さらに面倒なことに

スコットランドではEU 残留派が多数を占めています。

 

丁寧にしないと、また独立を求めかねないので、

難しそうな問題です。

 

とはいえ、イギリス国内の問題です。

前回かきました議会主権の原則から、イギリス議会は本気を出せば、

スコットランド議会を廃止できます!!

さすがに政治的に無理でしょうが。。。

 

北アイルランドの場合

スコットランド議会は、極端なはなし廃止にしてしまえばいいのです。

しかし、北アイルランドでは、そう簡単に終わりません。

 

北アイルランドは歴史が複雑です。(僕も把握できてません)

ただ、おおざっぱな理解ですが

北アイルランドにはイギリスに親近感を感じるグループと、

アイルランド共和国と統合したいグループがいます。

 

このようなグループ間で争いが続いてきたのですが、

ブレア政権時代にベルファスト合意が締結されました。

 

この合意において、最終的に北アイルランドアイルランド共和国と統合することを目指すことが示されました。

さらに、北アイルランド住民は、イギリスとアイルランド共和国

両方の国籍を取得することができます。

 

これがBrexit のせいでややこしくなります。

まず、北アイルランドはイギリスの一部ですので、EU から離脱します。

しかし、北アイルランド住民にはEU加盟国であるアイルランド共和国の国籍をもつ人々がいます。

EU加盟国の国民は、EU法で人権が保障されているのですが、

イギリスはEUから離脱しますので、こうした権利を行使できなくなります。

 

また、移民問題Brexit の最大の理由ですので、人々が自由に行き来できるままでは、イギリスとしては困ります。

なので、どこかに国境を設けることになります。

北アイルランドEU から出ていくのだから、北アイルランドと共和国の間に国境をつくるのが合理的に見えるかもしれません。

しかし、イギリスは

北アイルランドの共和国との統合を目指す国際法の義務があります。

国境なんか作っている場合ではありません。

しかも国際法上の義務なので、議会主権も無力です。

 

じゃあ、アイルランド島ブリテン島との間に国境ですね、となりそうですが、

イギリス側に親近感を感じる側からすると大きな問題です。

 

そもそも、ベルファスト合意時点で、両国ともEU加盟国ですので、 

EUという制度が前提になっているわけです。

そこから離脱するというわけなので、こんなことになるのです。

 

 

今後Brexit はどうなるのでしょうか。

首相が変わっても解決しないような気もします。

 

というわけで、この辺でテスト勉強に戻ります!

 

ちなみに、この議論についてはこの本がとても参考になります。

  

 

*1:Vernon Bogdanor, 'Social Democracy' in Antony Seldon (eds), Blair's Britain 1997-2007, (CUP 2007) 177.