いんてりっぽくなりたいブログ

いんてりっぽくなりたい筆者がそれなりに頑張るブログです。

ガブチコボ事件

 

こんにちは、だいこん(仮)です。

今後、「毎日更新する」という僕の発言は、関西人の「行けたら行く」くらいのレベルの信ぴょう性しかないものだと思ってください。

一応報告ですが、更新がなかった理由は、AirAsiaをディスったから監禁されていたとかではありません。

 

さて、タイについて書くつもりはありますが、今はガブチコボについて書きたいのです。

国際法を勉強されたことのある方は、ガブチコボ・ナジュマロス計画事件という国際司法裁判所で争われた事件を知っているかもしれません。

どういう事件か、僕は全く記憶になかったので、判例集をみて書いています。それによると、チェコスロヴァキアハンガリーの間にあるダニューブ川の治水に関する条約を両国は締結したのですが、ハンガリーが条約を終了させてしまします。

そういう事件です。

 

こんなどうでもいい事件をどうして僕が突然思い出し、わざわざ文章にしたか。

それは、「HHhH」という小説の第251章、または378ページにあります。

現在、ガブチークとクビシュとヴァルチークは救国の英雄となっていて、定期的に記念祭が催されている。襲撃場所の近くには、それぞれの名を冠した通りもできているし、スロヴァキアにはガブチーコヴォという名の小さな村もある。

 

 

ガブチークの名がガブチコヴォになったのです。

じゃあ、ガブチークってだれだ?という疑問が出てきます。すごく簡単な答えは、「HHhH」という小説の主人公の一人です。ただ、この「HHhH」という作品を小説と呼んでいいのか分かりません。

僕には文学作品をうまく要約する能力が備わっていないので、作品自体というよりもそこで描かれている歴史的事実についてざっくり記します。

ガブチークはチェコスロヴァキアの軍人。チェコがドイツの支配下に置かれたため、イギリスに出来たチェコ亡命政府に亡命します。

そして、舞台は1942年、ドイツの保護領となっていたチェコの首都、プラハ

ガブチークともう一人の主人公には、「金髪の野獣」と呼ばれていた、ラインハルト・ハイドリヒの暗殺が任務として与えられます。あのホロコーストの実質的な最高司令官だったとされる男です。そして、この男がチェコ保護領の総督を務めていました。その男を排除するという、不可能にしか思えない任務を与えられたのです。

 

この暗殺計画が成功したのか否かについては、ウィキペディアをご覧ください。察しのつくかたは、ガブチコヴォという地名の存在からわかるかもしれません。

 

この作品は、前述のように小説と呼ぶべきかどうかが分かりません。というのも、そのスタイルが僕の知る小説とは全く違うからです。

この作品において、作者は徹底的に史実に基づくことを重視しています。言い換えると、創作を可能な限り排除しようとしています。たとえば、ハイドリヒの乗っていたメルセデスが黒だったのか、それとも緑だったのかにこだわっています。

僕が持っている(固有名詞のせいで挫折した)英語版の'HHhH'の裏表紙に、「実在する人物についての小説を著すときに、どうやってでっちあげたいという誘惑に抵抗するかというストーリーが並行して描かれている」という風にかかれています。

また、主人公が誰なのか一瞬分からなくなるくらいに、ハイドリヒについての描写が多くなっています。たぶん本の半分ちかくハイドリヒです。

今までに見たことのない文章のスタイルに、引き込まれます。

 

おそらく日本人の多くは、ガブチークやクビシュという人物を知らないと思います。そもそもナチス・ドイツが実際にどんなことをしていたかについて、世界史の授業でもあまり触れないので知らないことが多いかもしれません。

ただ、僕がイギリスで感じたのは、ヨーロッパ人はナチスの行った残虐な行為等について僕らよりもはるかに豊富な知識を持っています。そのせいで僕は国際刑事法の授業で苦労することになります。

最近読んでいる小説に、「EU(ヨーロッパの統合)は、アウシュビッツから始まった」というようなセリフがありましたが、こうした戦争時の残虐性が現在のヨーロッパの礎となっていることは否めません。

ヨーロッパの理解にもつながると思いますので、ぜひ読んでいただきたい一冊です。