いんてりっぽくなりたいブログ

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3分の2よりハードな過半数

 

こんにちは、だいこん(仮)です。

先日、参議院選挙がありましたね。僕も行ってきました(一応、法学部なので)。

選挙は、名前を書くだけなら単純ですが、比例代表というのは難しいですね。政党所属意識というものが僕にはないですから。

個人的には、党のイデオロギーの差よりも、僕の世代と政治家をやってるような人たちの世代とのジェネレーションギャップのほうが深刻な気がします。だって、スマホの画面を数回たたくだけでイギリスから日本に無料で通話することが可能な時代の20代と、彼らとでは感覚が違いすぎるでしょう。。。

 

さて、今回は少し真面目に、どこかで目にした議論について書いていこうと思います。

この世には、日本国憲法の改正を目指して活動している人達が一定数存在しています(そんなことしたら、司法試験受験生が大変なことになるではないか!)。そういった人たちにとって、改憲派が国会において3分の2を占めることが重要になってきます。というのも、憲法96条が次のように定めているからです。

96条①:この憲法の改正は、各議員の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

というわけで、両議院で3分の2以上が改憲を望んでいなければ、国民の過半数がそれを望んでいたとしてもどうにもなりません。

ここから、「なるほど、憲法改正は困難なのか」という結論が出されます。しかし、本当でしょうか。本当に3分の2以上の議席数を確保することは難しいのでしょうか。

 

僕は、各議院の3分の2以上の賛成よりも、国民投票における過半数のほうが実は難しいのではないかと思っています。いや、3分の2と2分の1なら、3分の2のほうが難しいやろと思うのはもっともです。しかし、両議院の3分の2以上というのは、もうひとつの複雑なプロセス、選挙の影響も受けてしまうのです。

 

あえて極端な状況を想定することにします。この国では、両議院の選挙がともに小選挙区制で実施されているとします。この小選挙区制というのは、国民の意見の小さな差を国会における大きな差に変えてしまいます。

たとえばイギリスの庶民院では、すべての議席小選挙区制によって選ばれていますが、ときに異常とも呼べる状況を生んでいます。

トニー・ブレア率いる労働党が躍進した1997年の総選挙を見てみましょう。この選挙で労働党は、全投票の43.2%を獲得しました。その結果得ることができた議席数は418議席で、これは全体の64.3%に相当します。お分かりの通り、3分の2というのは66.6666%になるので、このとき労働党がほぼ3分の2を占めていたということがわかります。

少し整理すると、労働党は全票のうち43%を獲得したに過ぎないのに、議会の3分の2を占めることができたのです。

ちなみにですが、この選挙の投票率はかなり低かったようで、戦後最低を記録したようです(それでも71.5%)。*1

投票した71.5%の人のうち、43%が労働党に投票した結果、労働党議席の64%を獲得したということです。じゃぁ、国民投票をしたとしても、結果は予想がつかないですね。

 

もちろんこの議論が日本にそのまま当てはまるわけではありません。日本の場合は、比例代表も併用しているので、こんな極端なことにはなりません。しかし、小選挙区制を使っていることから、ある程度は多数派が過大評価されている部分があるといえるでしょう。

 

 ここまでは選挙制度の話です。ここからは、僕の思いつきです。

イギリスで憲法を勉強していた時、あの国には憲法らしい憲法がないので、なにが国民投票を必要とするのかもよくわからず、教科書で学ぶしかありません。その教科書に、選挙制度の改正が国民投票による承認を要するという記述があったのです(もちろん議会主権というものの性質上、議会はそんな議論を無視できますが)。

とにかく、僕はそのことを知って「ん?」となりました。というのも、日本の場合は国民投票なく選挙制度の改正が可能だからです。その根拠が憲法47条です。

選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。

法律で定めているんですね。じゃぁ、極端な話ですが、すべての選挙を小選挙区制にしようと思えばできるんですかね。それができれば、議会の3分の2は簡単に見えてきませんか。

 

というわけで、国民投票のほうがキツいんじゃないかというお話でした。

 

 

記憶があいまいですが、この話に似た議論がこの本で出てきた気がします。ご興味がありましたら、ぜひ。

 


多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

 

 

 

 

*1:Kevin Jefferys, Politics & the People, Atlantic Books, 254.