the Human Rights Act
こんにちは、勉強に追われ続けています、だいこん(仮)です。
週に一回日本食ハンティングに出ているのですが、最近の発見として、寿司はサーモンに限っては、日本で食べるよりもずっとおいしいです。
もしイギリスに行くことがあれば、ぜひサーモンを食べてください。
さて、勉強に追われているので、せっかく勉強したこと(というか、その時の思い付き)を書き残しておこうと思います。
イギリスは議会主権という、議会が決めたことがすべてという国です。
逆に議会で決まらないと今のBrexitみたいなことになります。
そのため、明らかですが、人権が蔑ろにされる危険性をはらんでいます。つまり、議会が「お前を国外に追放する」という法律を作ればどうにもなりません。
とはいえ、第二次世界大戦後にさすがに人権を保障しないとやばいということで、欧州人権条約という基本的な人権を保障する条約ができます。イギリスもその条約批准国の一つです。
この条約はユニークな点があります。それは、欧州人権裁判所というものを設立しているという点です。人権を侵害されたと思った個人は、国家を相手に欧州人権裁判所で人権侵害を訴えることができます。
しかし、条約は国際法なので、イギリス国内では特に効力がありません。
議会がすべてだからです。
裁判所は議会が法律として成立させたものしか適用することができないので、いくら欧州人権条約がある権利を保障していたとしても、それを頼ることができません。
そのため、権利を侵害された場合は、ストラスバーグ(ストラスブール)にある欧州人権裁判所までいかないといけません。
そしてそこでの判決も国際法上の効力しか持たないため、イギリス国内でちゃんと対応してくれるかはわかりません。
議会主権という大原則があるため、こういうことになるのです。
そこで1997年に与党になった労働党が、翌年に人権法を制定します。
それがthe Human Rights Act 1998 です。
これについての授業に今日行ってきたのですが、衝撃でした。
まず、法律の名前がミスリーディングです。
法律の条文を見てみると、そこには3つ重要なことが書いてあります。
まず、公権力は欧州人権法に定められている人権に反することをしてはならない、というものです。
2つ目は、裁判所は法律を解釈するときに、人権を制限しないでいいような解釈をしよう、というものです。
そして、それができないときに、その法律が条約上が保障する権利と不適合であるという宣言をすることができる、というものです。
そう、別に人権を定めていないんです。
ここに書かれているのは、ただの手続きであって、人権の内容自体は欧州人権条約です。条約で定められている人権を国内で保障するための手続きを決めているだけです。
そして、結局は議会主権の原則との関係上、裁判所が人権との不適合を宣言したとしても、宣言にとどまります。法的な効力はありません。
単に国際法上の義務である人権の保障を国内で効率的に実施することを定めただけの法律なのに、この法律を廃止したい人たちが大勢いるようです。
ただ、この法律を廃止したところで欧州人権条約上の義務がありますし、結局みんなストラスバーグまで旅行して裁判をするだけです。
というわけで、この「人権法」という名前をつけてしまったために、この法律が個人に権利を与えて、多数派の支持を受けている政策等の実施を邪魔しているという印象を与えているように思います。
法律の名称って大切ですね。
ちなみに Constitutional Reform Act っていう法律があります。この法律で最高裁判所を作ったのですが、憲法を法律でころころいじれるっていう特徴がよく表れている名称ですね。