法律と政治
こんにちは、猛暑により干からびていました、だいこん(仮)です。
冬が待ち遠しいですね。
さて、最近法律の勉強をちゃんとやり始めたので、本日は法律関連です。
法律といってもいろいろあります。世の中には「スポーツ基本法」とかいう、何がしたいのかが不明な法律も転がっています。
その中に憲法って呼ばれる法がありますよね。大学で法学部を選択してしまった場合には、完全に避けて卒業するということは不可能なのではないでしょうか。この法について、多くの学生(もしかすると僕だけの認識なのかもしれもせん)が、憲法といえば人権の話だという風に感じているような気がします。
もちろん、憲法の条文を見ればわかるように、日本国憲法は人権を保障しているので、間違いではありません。僕も憲法の授業といえば人権の話をするものだと思っていました。教科書を開いてみても、人権の話をしたあとに、議会と内閣の関係とかを扱う統治機構の話に移ります。
しかし、イギリスという国でその認識が壊されました。
教科書を開けば違いは明らかです。そう、人権保障の話が全く出てこないんです。
じゃあ何を学ぶのかというと、国家を構成している(Constitute)機関自体や、そうした機関相互間の関係についてです。たとえば、議会主権の話とかです。
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よって、非常に政治に関連する分野の法律を学ぶことになります。これに加えて、イギリスの特徴である、不文法や議会主権、裁判所が法律を無効にすることができないことなどから、すべての議論が最終的に議会で決着をつけるべき事柄になってしまいます。
そういうわけで、法律の話だから政治は全く関係ないというような態度はとれません。イギリスのEU離脱問題も、非常に政治的な議論ですが、憲法に大きな変更をもたらすため無視することはできません。
(一方で、日本の憲法の授業で憲法9条という政治的なトピックについて深く立ち入っていた記憶はありません。忘れてるだけかもしれませんが。)
このような違いにモヤモヤしていたのですが、それを解決してくれそうな本を発見しました。それが、この僕以外にこの本を持っている日本人はいないであろう、Waldron さんの本です。
The Law (Theory and Practice in British Politics) (English Edition)
ここに出てくる法の2つのとらえ方というのが興味深いものでした。
1つ目のとらえ方は、法というものは、政治的な議論を離れて、それ自体として特別なものであるという見方です。(p. 14)法律は議会で制定されるわけですが、それが制定された以上は、反対していたものも法律を遵守する必要があり、また法の制定にあたっては、極端に政治的な法律にならないように配慮することが求められます。
もう一方の考え方は、法律は政治的な議論の結果に過ぎないというものです。議員たちは、自らの考えや理想を法律に反映させるために働いています(そう思いたい)。そして、国民の支持の下で議会の多数派を形成したグループの考えや意見が法律になっているという見方です。そうして、この立場からは、法律を政治的な議論から独立したものとみなす立場は、実態がないフィクションだということになります。
この考え方の違いは、法律を廃止した場合に問題となります。
Waldronさんが例で挙げているのが、Clay Crossという町の話です。この町は、1970年代頃、失業率が高く、家に住めない人が多く存在したようです。そこで地方自治体が公営住宅の家賃を低くしました。その一方で、中央政府は、地方でのこのような行為を規制するために法律を制定しました。この法律が、住宅の家賃を適正な価格にすることを求めています。
しかし、Clay Crossの議会は何もせず、公営住宅の家賃は低いままとなっていました。これに対し、中央政府は行動します。1933年の地方政府法の規定により、地方議会が怠慢によって損害を出したときは、その損害を地方議員が埋めなければならない可能性があったのです。そして、結果的にこのClay Crossの議員たちは、中央政府が適切と考えている家賃と、実際にClay Crossが定めている家賃のギャップを埋め合わせる義務を負うこととなりました。これがあまりにも巨額であり、ほとんどの者が破産する額だったそうです。
その翌年、中央政府において政権が交代します。そして、新政権は前政権が制定した問題の法律を廃止しようとします。
このときに問題となったのが、Clay Cross の議員が負っている損害を賠償する義務も同時になかったものとすべきかどうかです。
みなさんはどう考えますか。
もし法律が政治から独立したものだと考えるのであれば、議員が法律に従わなかったという事実に変わりはなく、賠償をすべきだということになりそうですね。
一方で、法律なんて議会多数派の意見に過ぎないというのであれば、議会多数派の見解、もしくは人々の意見が変化したことから、賠償についても、それを免除するという法律を作ってしまえば解決しそうですよね。
こういうふうに、日本の法学部にいるとあまり考えることのない問題に遭遇するという点で、留学に行く価値はあるのかなと思いました。
まぁ、文章ここまで書いといてなんですが、まだこの本ほとんど読み終わってません(第1章の議論だけ要約してみたってだけです)。早いこと読んでしまおうと思います。